マイクロスコープ

保険診療と自由診療のメリット、デメリット(根管治療の場合)

日本の保険制度はありがたいものです。経済的に困難な方でも一様に標準的な医療処置を受けられます。

しかし一方で問題もあります。保険治療では保険で認められている機器、機材、材料しか使うことはできません。自由診療の場合は最も良いと思われる材料や器具、機材を使用することができます。

例えばMTAセメントです。現在、日本の保険治療でMTAセメントは覆髄(虫歯が極めて深い場合に歯髄の保護をする)にしか使用を認めていません。保険診療では根管充填材としては認可されていません。しかし海外では優秀な根管充填材として広く使われています。MTAセメントを根管充填材として使うことで、穿孔部の処置や根尖部の破壊された難症例でも抜歯せずに歯を保存することが可能なことが多いのです。これまでは抜歯になっていた歯もマイクロスコープとCTとMTAセメントによって保存できる可能性が格段に高くなりました。

また不幸にも根管内で根管治療器具のファイルなどが折れても除去できる場合も少なくありません。

以下、当医院で行っているマイクロスコープ(手術用歯科用顕微鏡)を使用した根管治療です。

1 感染歯質の除去を行い、必要に応じて隔壁を作り、ラバーダム用のクランプがかかるように歯の概ねの形態を作ります。

2 ラバーダム防湿を行います。

3 根管内の清掃、汚染歯質の除去を行い、超音波洗浄を行います。

4 レーザーで殺菌して、薬液による交互洗浄を行います。

5 MTAセメントにより根管充填を行い、レントゲンで確認します。

6 根管治療は根管数、根管の複雑な形態によって数回の治療が必要になります。

マイクロスコープ(手術用歯科用顕微鏡)のメリットは次の通りです。

1 原則はラバーダム防湿下で行うので唾液による細菌感染がない。

2 顕微鏡で拡大下で感染歯質を除去するので、削りすぎることがなく残存歯質に対するダメージを最小限にできる。

3 ライトタッチレーザーによる殺菌効果が期待できる。

4 術後疼痛がほとんどない。

5 咬合痛が徐々に改善することが多い。

6 術前症状が軽快することが多く、術者や患者さんのストレスが少ない。

7 薬液洗浄による口腔内への漏洩を防止できる。

8 リーマーやファイルなどの根管治療器具の口腔内への落下や誤嚥、誤飲を防止できる。

マイクロスコープ(手術用歯科用顕微鏡)のデメリットは次の通りです。

1 1回の治療時間が長くなる(1~1,5時間)

2 治療費用が保険診療に比べると高くなる(初回55000円 2回目以降半額 税込み)

 

保険診療のメリット

1 治療費用が安く済む

保険診療のデメリット

1 理想的な材料、機器を使えない。

2 根管治療が奏功せず、痛みが出ることがある。

 

いかがでしょうか。55000円なんてとても高くて払えないと思う方も多いと思います。しかし、歯科医師が1時間半ほど一人の患者さんにかかりっきりで、しかも理想的な材料を使い、全力を挙げて治療するのが精密根管治療です。

保険治療で根管治療で治癒しなければ残念ながら抜歯になります。もし抜歯したところにインプラントを希望すれば数十万の治療費が必要になってきます。

なお、マイクロスコープを使用しての根管治療は複雑な根管をCTで確認できれば保険適応されます。しかし、前述の通りレーザーやMTAセメントは使用できません。

最後になりますが、いくら良い治療をしたとしても、根本的な原因除去、除菌療法、食生活の改善などを行わなければ問題を先送りにしているに過ぎません。治療も大切ですが、しっかり予防して虫歯自体を作らないことが最も大切です。

 

 

 

 

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